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Home » Pro Toolsレポート, レポート記事 » AVID HD OMNI を検証する(その1)


HDOMNI

先日の記事でAVID Pro Tools HD用のインターフェースが一新されることをお伝えいたしました。中でもHD OMNIはこれまでのPro Tools HD用インターフェースにはなかったタイプの製品であり、とりわけプライベートスタジオやプロジェクトスタジオのような比較的小規模な制作環境にベストマッチなインターフェースとなっております。今回アビッドさんからこのHD OMNIをお借りして、サウンドウーノのスタジオで検証してみることにいたしました。

発表の時からかなり話題となっているインターフェースですので、既にあちこちのサイトでその詳細を見ることができます。基本的な仕様の詳細は、こちらのアビッドさんのホームページにをご参照ください。

それでは早速サウンドウーノのPro Tools HDにHD OMNIを繋いでみます。なおHD OMNIを使用するには、Pro Tools HD バージョン8.1以上のソフトウェアが必要です。

まずは「ハードウェア設定」の「メイン」のタグを開いてその仕様を確認してみましょう。

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上の画像をご覧いただいてお分かりの通り、入出力として指定できるのは8イン8アウトとなっております。入力側にはアナログ4ch、デジタル2ch(AES/EBU、S/PDIF、Opticalから選択)、ADAT 8ch(デジタル2chがOpticalの場合は使用不可)の中から、出力側にはアナログ8ch、S/PDIF 2ch、ADAT 8ch(Optical 2chに変更可能)、AES/EBU 8chの中から選ぶことが可能です。

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続きまして「アナログ入力」のタグを見てみましょう。

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リファレンスレベルとして “+4dBu” と “-10dBV” の選択が可能な他、リミッターの設定が可能です。リミッターの効果も “ソフトクリップ” と “カーブ” という2種類から選択可能です。

HD OMNIの最大の特徴として、2ch分のマイクプリを搭載していることが挙げられます。操作はフロントパネルから簡単に行うことが可能となっており、フロントのマイク端子にはギターなどのインストを接続可能な他、背面にはTRSフォーン端子によるインサートの入出力も装備しております。(マイク端子はフロント優先だそうです。)

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このマイクプリの性能も簡単にチェックしてみましたが、Pro Tools HD用インターフェースの信頼を裏切らない高品位なものだと思います。キャラクター的な特徴は薄いかもしれませんが、HD OMNIだけで高品位なボーカル録音などが簡単に行えるのは、かなり重宝するのではないかと思います。

続きまして「アナログ出力」のタグです。

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画像をご覧いただいてお分かりの通り、リファレンスレベルに “ライン(+24dBu)” の他に、 “スピーカー(+10dBu)” という選択がございます。HD OMNIは、パワードスピーカーやアンプにダイレクトに接続して使用することを想定しております。後述する「モニター」のタグで2系統のスピーカー出力を選択することが可能なのです。

HD OMNIのフロントパネル右側にはアウトプットのボリュームノブや出力切り替え用のスイッチ類が付いており、モニターセクションをダイレクトにコントロールすることが可能になっております。Pro Tools LE用のインターフェースやネイティブDAW用のインターフェースでは当たり前のように付いている機能ですが、HD OMNIの登場により、Pro Tools HDのセッティングが一変する可能性があると言っても過言ではありません。

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“ALT” のスイッチは後述する「モニター」のタグで設定したスピーカーのALT出力への切り替えスイッチです。上の画像ではALTスピーカーへ出力し、その出力レベルを調整しております。HD OMNIだけで2系統のスピーカーを切り替えられるのは本当に便利です。 “MUTE” スイッチも付いておりますが、HD OMNIの電源を入れた際には自動的にこのスイッチがオンになるように設計されております。Pro Tools LE用の003などにも採用されている機能ですが、さすが、気が利いてますね。

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“CUE” のスイッチはヘッドホンの出力の切り替えスイッチです。上の画像のようにHD OMNIを繋いでPro Toolsの「I/O設定」を見てみると、HD OMNIの出力には8ch分のアウトの他に、 “キュー” という2chの出力がございます。 “CUE” ボタンがオフの際は “Stereoモニター” と同じ信号がヘッドホンから出力され、オンの際は “キュー” へ割り振った信号が出力されます。Pro Toolsのミキサー上でヘッドホン用のキューミックスが作れるわけです。ヘッドホンの出力レベルはボリュームノブをワンプッシュすることで調整可能です。(下画像参照)

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その他「アナログ出力」のタグには、 “TRSミラー” の設定項目もあります。HD OMNIの背面にはD-sub25pinの8chアナログ出力の他に、TRSフォーンの2chの出力が装備されており、そこへ “アナログアウト1-2″ か “アナログアウト7-8″ の出力をミラーリング出力できるようになっております。ここからヘッドホン・ディストリビュータへ接続したり外部レコーダーへ出力したりと様々な使用法が考えられますので、これも本当に気の利いた機能です。個人的には “キュー1-2″ の出力も選択可能だったりすると、更に便利になるのでは?と思いました。

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ちなみに「アナログ出力」のタグの “ライン(+24dBu)”、これってレベル大き過ぎない?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そこはご安心ください。フロントパネル右側のセットアップのところで、アウトプットのチャンネル毎に0.1dBu単位で微調整をしていくことが可能です。このレベル調整はマイクプリと同様にデジタル制御となっておりますので、非常に簡単に調整可能です。

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続きましては「モニター」のタグです。

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前述の通り、2系統のスピーカー出力を設定できます。上の画像ではアナログ出力を使用しておりますが、もちろんデジタル出力を選択することも可能です。ここで最大7.1chのサラウンド出力を設定することも可能になっており、正に至れり尽くせりです。なお上の画像ように2系統のスピーカー出力をアナログ1-4chで構成すると、「メイン」のタグの “出力” の項目では “アナログ3-4″ はあくまでスピーカー専用となり、Pro Toolsの出力先としては選択できなくなります。(下画像参照)

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最後にHD OMNIの最大の特徴である「ミキサー」のタグです。

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これはネイティブDAW用のインターフェースなどに見られる入力信号のダイレクトモニタリング用ミキサーです。 “MON” のスイッチを押したチェンネルはモニター出力へ、 “HP” のボタンを押したチャンネルはヘッドホン出力へ、このミキサーのレベル設定に従ってダイレクトに出力されます。アナログ4ch、デジタル2ch、ADAT 8chの全ての入力に対して設定可能です。

正直、Pro Tools HD用のインターフェースにこのような機能が付くこと自体が驚きです。Pro Tools HDはソフトウェアミキサーを介してのモニタリングを極めて低レイテンシーに行えるからです。しかしこのミキサー機能、Pro Tools上でモニター用のオーディオトラックを作らずとも入力信号をいつでもモニタリング出来るわけですから、かなり便利に使える機能であることは間違いありません。ミキサー画面の下にある “レコード/入力モニター オン” の項目を上の画像のように “ミキサーのインプットをミュート” にしておけば、Pro Tools上でレコーディング/モニター用のオーディオトラックを作った時点で、このミキサーの入力がミュートされます。本当によく考えられています。

ちなみにこのミキサー機能、最後に調整した設定をHD OMNIが記憶していて、Pro Toolsが起動していなくてもHD OMNIの電源を入れた時点で機能します。例えばシンセやギター、CDプレイヤーなどをHD OMNIに繋げっぱなしにしても、Pro Toolsを起動せずにその出音を確認できるわけです。繰り返しになりますが、本当に良く考えられてますね。

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HD OMNIの機能の概略をご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?

ここまでの「ハードウェア設定」の各画像をご覧いただいてお分かりの通り、HD OMNIはもちろん192 I/Oと同時使用することが可能です。例えば今192 I/Oの出力をMackie Big KnobやPreSonus Central Stationなどに繋いで使用されている方は、HD OMNIを追加するだけで、インターフェースからのダイレクトな出力をより高品位にモニターできるようになるわけです。そして今お使いの192 I/Oはハードウェアインサート専用にしてみるというのはいかがでしょう?

HD OMNIには同時に発表されたAVID HD I/Oと同等のAD/DAが搭載されており、192 I/Oと比較して確実に次世代のAD/DAを搭載しているということになります。1Uだと何だか廉価版のインターフェースの印象があるかもしれませんが、実際の出音を聞いてみると、次世代のAD/DAであることが一聴して分かります。

AVID HD OMNI 販売価格¥315,000(税込)

今回はアビッドさんにお借りしたHD OMNIでの検証でしたので、現状ではサウンドウーノでご試聴いただくことができない状態ですが、個人的にもスタジオへ導入するかどうか、迷ってしまう製品です。ご興味をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合せください。(TEL: 03-3568-8363 E-Mail: info@sounduno.com

今回HD OMNIの検証を行ったのは、もちろんきちんと機能をご紹介したかったというのもありますが、実はもう一つ大きな理由がございます。最近刷新したアビッドさんのホームページを見てみると、Pro Tools HD用インターフェースのどの製品も、互換性の欄に「Core Audio または ASIO ドライバに対応している他社システム」との記載があるのです。

Pro Tools 8でMIDI機能が強化はされましたが、MIDIシーケンスの組み立てにはLogic/DP/Cubaseなどを使用されている方がたくさんいらっしゃることと思います。そしてこれらのネイティブDAWのために、Pro Tools HDとは別のインターフェースをご用意されているケースが多いかと思います。もしもHD OMNIがネイティブDAWでも問題なく使用できるなら、こんなに便利なことはありません。

このネイティブDAWでのHD OMNIの動作につきましては、ページを変えてご紹介してまいります。

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