今回は64ビットに対応したLogic Pro 9.1.0のメモリ使用について掘り下げてまいります。
まず32ビットモードのLogic Pro 9.1.0が、現実的にメモリをどれくらい使用できるのかを確かめてみましょう。以下の画面は私がいつも32ビットLogicのメモリ使用制限に悩まされている自作の曲です。
Garritan Steinway Virual Grand PianoやToontrack Superior Drummer 2、Spectrasonics Omnisphereなどが含まれており、全てのライブラリを読み込むと、このプロジェクトだけで消費メモリが2GBを若干超えてしまうのです。
このプロジェクトを立ち上げる際にOS Xのユーティリティの中にある「アクティビティモニタ」でメモリの使用量を監視していると、実メモリの使用量が1.5GBを超える辺りで以下の警告を受けます。
この警告はLogic 9から表示されるようになったのですが、これはあくまで警告のみで、「OK」ボタンを押せば作業を進められます。
ここでSuperior Drummer 2のライブラリにドラムの「被り音」まで読ませていくと、メモリの使用量はどんどん増えていき、最後はアクティビティモニタで以下の表示になるまでメモリを消費してしまいました。
画面上では実メモリを2.07GBまで使えておりますが、実はこの状態でもう限界を超えております。このまま作業を続けていると以下の画面が表示され、ほぼ100%の確率でLogicがクラッシュをしてしまいます。
ただLogic 9になって少しマシになったのは、上記の警告の通りクラッシュの際にプロジェクトをコピーする機能が追加され、クラッシュ後にもう一度そのプロジェクトを立ち上げる際に、クラッシュする直前の状態の再現を試みることができるようになったことです。(以下の画面が表示されます。)
しかしメモリ使用の上限を超えたからクラッシュしたプロジェクトですので、再現を試みることはできても、現実的には立ち上がらない場合も多々あります。
Logic Pro 9がリリースされてからいくつかのプロジェクトで確認を試みましたが、Logic Pro 9で作業続行可能なメモリ使用量は、実メモリで2GB弱ぐらいではないかと思います。
OS 10.5 Leopard環境下でのLogic Pro 8の頃はうまくいけば実メモリを2.4GBぐらいまでは消費できていたので、警告などいろいろな回避メッセージが表示されるようにはなったものの、使い勝手は若干悪くなっていることになります。(もっと言うとOS 10.4 Tiger環境下でのLogic Pro 7の頃は、実メモリを2.8GBぐらいまで消費できることもありました。)
余談になりますが、この32ビットアプリのメモリ使用制限の問題に対する一つの回避策が「Vienna Ensemble Pro」であり、この画期的なアプリケーションを多くの方にご紹介するため、サウンドウーノでは特集記事を組ませていただきました。
それでは早速64ビットモードのLogic Pro 9.1.0で同じプロジェクトを立ち上げてみましょう。前回の記事で記載した通り、64ビットに対応していないプラグインに関しましては「Audio Unit Bridge」を使って立ち上がってまいります。
このプロジェクトはエフェクトにUAD2やDuende mini、そしてWavesなどもそこそこ使っている状態だったのですが、64ビットモードのLogicでも何の問題もなくきれいに再現されました。32ビットモードの画面と比べてみても、何ら変わりがないことがお分かりいただけると思います。出音についても、その変化を認識することはできませんでした。
ちなみに「Audio Unit Bridge」で立ち上がっている32ビットのプラグインに関しましては表示に制限があります。プラグインをクリックするとまず立ち上がってくるのは以下の画面で、この画面をクリックして初めてプラグインの実画面が立ち上がってまいります。また32ビットのプラグインの画面は、一度に一つしか表示させることができないそうです。
ここでアクティビティモニタを立ち上げ、消費メモリの状態を確認してみます。
「32-bit Audio Unit Bridge」で1.66GB、「Logic Pro」で429.2MB、合わせて約2.09GBですので、32ビットLogicの時の実メモリを2.07GB消費した状態が、ちょうどそのまま再現されたようです。このプロジェクトではEXSなどのLogic標準のインストをいくつか、そしてLogic標準のエフェクトに加え64ビット対応のVienna Suiteも少々使っておりますので、それらの消費メモリがLogic Proに割り振られ、64ビット非対応のプラグイン群が32-bit Audio Unit Bridgeに割り振られたようです。
ここで気になるのは、64ビットに対応したLogic Proはまだまだメモリを消費できるにしても、32-bit Audio Unit Bridgeはもちろん32ビット動作ですので、メモリの使用制限はどれくらいになるのか?ということです。
そこで先のプロジェクトにメモリ使用量の多い32ビットのプラグインインストを追加し、アクティブティモニタで監視してみることにしました。
一応、上記の通り32-bit Audio Unit Bridgeで2.34GBまでメモリを消費することができました。しかしこの状態で既に限界を超えているようで、操作を続けると以下の警告が出て32-bit Audio Unit Bridgeのみクラッシュしてしまいました。(警告画面ではSuperior Drummer 2でクラッシュしておりますが、これはあくまでメモリ使用の上限を超えたことによるものです。)
32-bit Audio Unit Bridgeがクラッシュしてしまいましたが、Logic Proは起動したままの状態です。Logic上には以下の警告が出て、32-bit Audio Unit Bridgeの再現を試みることが可能なようです。
しかしメモリ使用の上限を超えたことによるクラッシュですので、再現を試みてもうまくいかない場合が多々あるのではないかと思います。
最後に、OS X Snow Leopardを64ビットカーネル起動させた際の動作についてです。
ごくごく簡単に確かめてみただけなのですが、正直なところ、32ビットカーネル起動の時との違いがよく分かりませんでした。Logic Proは32ビットモードでも動作いたしますし、Logicが64ビットモードの際に「Audio Unit Bridge」で32ビットプラグインを使用できるのも同様です。
64ビットカーネル起動では周辺機器のドライバも揃い切っておりませんし、32ビットカーネル起動の状態でもLogicを64ビットモードで使用できるとなると、現状ではあまり64ビットカーネル起動にこだわらなくてもいいように思います。
私もOSの専門的なことまではよく分からないので、あまりいい加減なことは言えないのですが、、、あくまでご参考程度に。
64ビットに対応したLogic Pro 9.1.0を2回にわたって特集してまいりました。いかがでしたでしょう?私個人的には、正直「まだ微妙・・・」といった感想です。
32ビットのメモリ制限には前々から悩まされてまいりましたが、64ビット対応のプラグインがほとんど存在しない現状では、制限がいくつかある64ビットモードのLogicを今すぐ使い始めるメリットは、それほど多くないように思います。
しかしLogicもバージョン9になり、ただ起動しただけでもそれなりにメモリを消費するアプリケーションになってしまっている現状を考えると、待望の64ビット化であることは間違いありません。メインDAWの一つであるLogicが64ビットに対応した以上は、各社プラグインも64ビット化されるのは時間の問題でしょう。
64ビット化に関してはWindows環境に数歩遅れていた感のあるMac OSではありますが、今後に多いに期待したいと思います。
それでは、また。
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