前回から時間が空いてしまいましたが、今回はWindows XP SP2環境におけるCubase 4での動作検証を行いたいと思います。(チェックに使用したWindowsマシンは、Core2Duoの展示機です。)
ご存知の方も多いとは思いますが、Windows XP(32bit)には、1アプリ2GBまでという、アプリケーションが使用できるメモリ容量の制限がございます。大容量のサンプルを取り扱うプラグインを多く使用するDAW環境においては、この制限は何ともやっかいです。
まさに大容量音源の代名詞とも言えるVienna Instrumentsがこの制限の中でどこまで立ち上がるのか、今回は迫ってまいりたいと思います。
チェックに使ったソングは前回と同じデータです。LogicからSMFで吐き出し、Cubase 4に移植いたしました。
前回の記事でもご説明した通り、このデータにはVienna Instrumentsが23台、SynthogyのIvoryが1台、SpectrasonicsのAtmosphereが4台、Trilogyが1台、Stylus RMXが1台使われております。
OS X版のVienna Instrumentsをプラグインとして使用する場合、”Vienna Instruments Server Interface”というReWireのような技術を使うことで、シーケンサー・ホストとは別領域のメモリを消費できることは前回の記事で述べた通りですが、Windows版のVienna Instrumentsは、普通に通常のプラグインとして立ち上がります。
つまりWindowsでVienna Instrumentsをプラグインとして使う場合、Vienna Instrumentsが消費するメモリはシーケンサーが消費するメモリに加算されていくわけです。
この動作違いから、OS Xで立ち上げたプラグインを全て同様に立ち上げるのは無理だろうという予測はありました。そこでIvory、Trilogy、Atmosphere、Stylus RMXを立ち上げるのは後回しにし、まずはVienna Instruments23台を立ち上げてみることにいたしました。
結果としては、見事に23台分、全てきちんとライブラリを読み込ませた状態で立ち上げることに成功いたしました。前回の記事でも書きましたが、Vienna Instrumentsの消費メモリの少なさは本当に驚異的です。
更に驚異的なのは、ソングを走らせている時のCPU負荷です。
上記のVSTパフォーマンスがほぼ最大値です。(ちなみにオーディオ・バッファは256です。)この最大値の時のWindowsタスクマネージャーは以下の通りです。
このCPU使用率の値、本当にソングを走らせている最中のものなのです。メモリは1.82GBも消費されており、ライブラリがたっぷりと読み込まれているのは分かりますが、とてもソングが鳴っている状態には見えません。
ハードディスク・ストリーミングを使用するソフトの中には、状況によってはCPU負荷が急激に上がってしまうものも見受けられるので、Vienna Instrumentsのこの設計は本当に素晴らしいと思います。
この状況に気を良くし、後回しにしたプラグイン・インストも追加してみたのですが、Trilogy1台までは成功するものの、そこにAtmosphereを加えると必ずメモリ不足で落ちてしまいます。
Windows XP Professional Editionには、俗に「3Gスイッチ」と言われる裏技もあるのですが、かなり自己責任の領域に入ってしまうので、できれば使いたくないことろです。となると、Windows XP/Vistaの64bitバージョンで動作する環境が整うことが切に望まれます。
そんな中、Vienna Instrumentsからうれしいニュースが飛び込んでまいりました。Vienna EnsembleというVienna Instruments専用のホスト・アプリケーションを、ユーザに無償で配布するというのです。
まだ配布前ですので詳細は未確定な部分もありますが、このVienna Ensembleは、スタンドアローンでの動作の他、RTAS/AU/VSTとしても動作し、Vienna Instrumentsをマルチティンバーのプラグインとしても使用することが可能になるようです。
ミキサーの中にAU/VSTのエフェクト・プラグインを挟める上に、各楽器の定位や広がりをコントロールできるPower panningというパンが搭載されております。
使用用途としては、SteinbergのV-StackやNIのKOREに似た発想ではありますが、Vienna Instruments専用として遥かに充実した機能を持っているようです。
そして何と言っても注目は、64bit環境に対応しているということです!
Vienna Instrumentsがいくら素晴らしいストリーミングを持っていたとしても、各楽器の細かな奏法の違いを盛り込んだフル・オーケストレーションを、1台のコンピュータで実現させるにはどうしても無理があります。Vienna Instrumenntsが用意している奏法のバリエーションには本当に頭の下がる思いなのですが、現状では今ひとつ活かし切れないのです。
このVienna Ensembleが出てくれば、64bit環境のWindows機にメモリーをたっぷりと積み、Vienna Instruments専用の音源マシンを構築することが容易になります。配布が始まり次第サウンドウーノでも検証してみたいと思っております。詳細はまたレポートしていく予定ですのでお楽しみに!
先日ニューヨークで行われたAESでは、Steinberg Nuendo 4やTASCAM Giga Studio 4など、64bit環境をネイティブ・サポートする注目のアプリケーションが続々と発表されております。来年は64bit環境への移行が一挙に進むかもしれませんね。
実は今週から、サウンドウーノのショールームでVienna Instrumentsの全ライブラリをご試聴いただくことが可能になりました。OS X環境、Windows XP環境での実際の動作をご覧いただくことが可能になっております。
Vienna Instrumentsでの制作環境の構築も含め、ぜひ一度、サウンドウーノまでお気軽にお問い合わせください。
(サウンドウーノへお越しいただく際には、お電話(03-3568-8363)かメール(info@sounduno.com)にてご連絡ください。)
株式会社サウンドウーノ 宇野克郎
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