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Home » Viennaレポート, レポート記事 » Vienna Instrumentsを検証する(その1)


サウンドウーノのショールームでは、至上最高の音と知能を結集したオーケストラ音源、Vienna Instruments Symphonic Cubeの試聴が可能になっております。これから数回に分けて、このVienna Instrumentsを検証してまいります。

Vienna Instrumentsの歴史や機能に関しましては、クリプトン・フューチャー・メディアさんのブログ内に、19回にも及ぶ素晴らしい特集記事がございます。サウンドウーノの検証記事では、Vienna Instrumentsをプラグインとして使用する際の実際の動作など、少し突っ込んだ内容にしていこうと思っております。

もともとはGIGAライブラリーとして登場したVienna Symphonic Libraryではありますが、昨年から発売されているVienna Instrumentsシリーズは、ホストアプリのプラグインとして動作させることが前提となっております(AU/VSTに対応)。というのも、Vienna Instrumentsのスタンドアローン版はマルティティンバーの機能を持っておらず、複数のMIDIチャンネルを同時に受けることができないからです。

ViennaInst

それではホストアプリのプラグインとして使用した際にどのような動作になるのか、今回はOS X版でのプラグインの動作について、Logic Pro 7を使って検証してまいります。ちなみにWindows版のVienna InstrumentsはOS X版とは挙動が全く違いますので、今回の検証記事はあくまでOS X版のみ適応の内容になります。Win版の動作に関しましては次回以降でまたご報告してまいります。

Vienna Instruments(以下VIと表記)のOS X版のプラグインの動作は、他のメーカーのものとは大きく異なります。VIをプラグインとして選んでも、すぐにVIの画面が立ち上がってはこないからです。

まずは以下のような “Vienna Instruments AudioUnit-Server Interface” という画面が立ち上がります。これはCubaseなどでVSTプラグインとして使用しても同様です。

VI_AU VI_VST

このプラグインの中にある “Show Window” ボタンを押すと、初めてVIの画面が立ち上がります。

Logic_VI

このプラグインの動作はReWireの発想に近いように思います。MIDIとオーディオのやり取りは “Vienna Instruments AudioUnit-Server Interface” を通して行われており、VIはまるでLogicとは別アプリのような挙動をいたします。事実VIを操作している間は、Logicのキーコマンドなどが一切効かなくなり、Logicがバッググランドで動作している状態になります。

ただReWireと大きく異なるのは、別アプリのように動いているようでいて、VIにロードしたライブラリの内容をLogicのソングがきちんと記憶してくれる所です。VIを使ったソングは、他のプラグインを使った時と同様に、そのソングを立ち上げるだけでライブラリまで全て読み込んでくれます。

なぜこのような仕様になっているのか、掘り下げてみたいと思います。

ここで、VIシリーズの前進にあたるVienna Symphonic Library Pro Edition(EXS版)を存分に使い、1台のコンピューター内でオーケストレーションを再現したLogicソングをお聞きください。8分弱にも及ぶ大作です。
Listen !

このソングの中では、Vienna Symphonic Library(以下VSLと表記)を使ったEXS24が23台、SynthogyのIvoryが1台、SpectrasonicsのAtmosphereが4台、Trilogyが1台、Stylus RMXが1台使われております。

EXS_Song

EXS24で使われている管弦楽器のほとんどでキースイッチが多用されており、このソングで使われているVSLのサンプル容量は3.78GBにも及びます。

VSLシリーズのような大容量ライブラリをプレイバックする際に一番問題となってくるのが、ハードディスク・ストリーミングのパフォーマンスです。Logic Pro 7に内包されているのEXS24は、このストリーミングの能力が非常に優秀なので、これだけの台数を立ち上げても難なく再生してくれるのです。

ただ新しいVIシリーズはライブラリが全て24bit化されております。単体販売されていた旧VSLシリーズは、全て16bit仕様でした。24bit化ということは、単純換算でもライブラリの容量が1.5倍増えることになり、その分ストリーミングの負荷も増大いたします。実は、VIのプラグインの特殊な仕様は、このストリーミング負荷が増大する問題を解決するのに一役買っているのです。

ここで、先のVSLを大量に使ったLogicソング内のEXS24を、VIに置き換えていきます。EXSで使用されているキースイッチの並びも同じように再現し、読み込まれるライブラリが全て同じ内容になるようにいたしました。

VI_Song

そしてOS Xのアクティビティモニタを用いて、EXSで組まれた場合とVIで組まれた場合とでメモリ消費の状況を比較してみます。

EXS24の場合は以下の通りです。

EXS_Memory

この検証はメモリを6G搭載したPower Mac G5 2.7GHz Dualで行っておりますが、Logicが既に2.14GBの実メモリーを消費しております。

コンピュータ本体にいくら大量のメモリを搭載したとしても、現状ではLogicが使用できるメモリ容量に限界があります。実メモリの消費量が2.5GBを過ぎた辺りから、再生音にノイズが乗ったり動作が不安定になったりしてくるのです。2.14GBの消費状況でしたらまだ多少の余裕はありますが、これでVSLのライブラリが24bit仕様になり、容量が1.5倍に増えたら、恐らく全てを読み込むのは難しいと思われます。

それではEXS24をVIに置き換えた際のメモリ使用状況です。

VI_Memory

Logic Proとは別にVSL-Serverというプロセスが登場し、そちらで実メモリを1.36GB消費することで、Logic Proの消費実メモリは766.59MBまで下がっています。

先に述べたLogicが消費できる実メモリ容量の限界は、あくまで1つのアプリでの限界ですので、このようにプロセスを分けて消費してくれるなら、それぞれのプロセスの限界まで実メモリを使うことができ、コンピュータに大量のメモリを搭載する効果が存分に発揮されます。

また、VSL-Serverで1.36GB、Logic Proで766.59MBの実メモリ消費ということは、ライブラリの容量が1.5倍になっているはずのVIは、かなり少ない実メモリ消費で全てのライブラリを読み込めていることになります。

で、EXSを全てVIに変更したこのLogicソングは、同じコンピューターでも見事に走ります。ライブラリが24bitになり、ストリーミング負荷が増大しているにも関わらずです。これは、コンピュータにメモリを6G搭載している効果も大きいとは思いますが、VIが非常に優秀なストリーミング・エンジンを持っていることの証しだと思います。

今はハードディスク・ストリーミングを行う大容量ライブラリ搭載のソフトシンセが非常に増えましたが、ハードディスクの能力の限界やメモリ消費の限界などの問題から、CPUはまだ余っているのに、再生音にノイズが乗ってしまったり、再生自体ができなかった経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

Vienna Instrumentsは、レガート奏法などの数々の素晴らしい新機能を積みながらも、上記の諸問題を極力排除し、コンピュータ1台でもかなりのオーケストレーションを実現できるよう考え抜かれたプラグインなのです。

Vienna Instrumentsの能力を最大限に引き出すマシン構成を施した、システム一式でのご注文を承っております。お気軽にお問い合わせください!
(ご購入/お問い合わせは TEL: 03-3568-8363 E-Mail: info@sounduno.comまで)

やはり一度実際に聞いてみないとという方は、ぜひ一度サウンドウーノのショールームまで足をお運びください。
(サウンドウーノへお越しいただく際には、お電話かメールにてご連絡ください。)

次回以降は、実際のCPU負荷やWindows版での動作について、順次ご報告してまいります。お楽しみに!


株式会社サウンドウーノ 宇野克郎
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