前回に続き、Pro Tools 10を特集してまいります。
今回のPro Tools 10の発表で衝撃だったのは、Pro Tools HD Accelの後継となるPro Tools HDXの発表です。何年も前から幾度となく後継機種発売の噂が飛び交っておりましたが、ついにそのベールを脱いだ形になります。
Pro Tools HDXの詳細についてはこちら、HD Accelとの違いについてはこちらにその詳細が掲載されております。
最も注目すべき変更点は、加工デプスが32ビット浮動小数点、ミキサー・デプスが64ビット浮動小数点処理に進化したことでしょう。兼ねてよりDSPベースの固定小数点処理が、スペック上ではNativeベースのDAWに劣る点が取り糺されてきましたが、その論議にもこれで終止符が打たれることになります。Pro Tools 10が32ビット浮動小数点ファイル・フォーマットをサポートしたこともあり、Pro Tools HDXの登場がどれだけのサウンド・クオリティの向上に繋がるのか、今から本当に楽しみです。
ちなみにPro Tools HDXでは、192 I/Oや96 I/Oなどの青いラック耳を持つレガシー・インターフェースは非対応になり、昨年発売された HD I/O、HD OMNI、HD MADI が必須となります。
Pro Tools HD 10までは、Pro Tools HDXにおいても192 I/Oなどのレガシー・インターフェースも使用可能だそうです。(2011年10月26日訂正)
さて前置きが長くなりましたが、今回はPro Tools 10で採用された新しいプラグイン・フォーマットについて見てまいります。
・AAXプラグインについて
Pro Toolsは長らく、TDM(DSP)、RTAS(Native)、AudioSuite(オフライン)という、3種類のプラグインフォーマットを採用してまいりましたが、Pro Tools 10の発表と同時に、AAX (Avid Audio eXtension) という新たなリアルタイムベースのプラグインフォーマットが発表されました。
AAXには、AAX DSPフォーマットとAAX Nativeフォーマットが用意されており、TDMとRTASの後継のフォーマットと言えるものです。DSPとNative間でサウンドの同一性が提供され、将来的には64bitへの対応も可能な規格となっているそうです。
AAXの採用に伴い、何と!近日発売のPro Tools HDXではTDMプラグインはもうサポートされておりません。RTASプラグインはサポートされておりますが、RTASフォーマットも順次AAXへ移行していくことが予想されます。
対応についてまとめると以下の通りです。(こちらの機能比較表もご参照ください。)
・Pro Tools HD 10(HDX)-AAX DSP/AAX Native/RTAS/AudioSuite をサポート
・Pro Tools HD 10(HD Accel)-TDM/AAX Native/RTAS/AudioSuite をサポート
・Pro Tools 10-AAX Native/RTAS/AudioSuite をサポート
AVID社のこちらのページを見ると多くのプラグイン・メーカーがAAXフォーマットをサポートすることを表明しており、SonnoxやMcDSPなどは自社のホームページでも告知を始めております。
Pro Tools 10発表後、プラグイン・メーカーとしては最大手のWavesからAAXへの対応表明が出ないことで話題騒然となりましたが、こちらのページを見る限りでは、非対応に決定というわけではなさそうです。
AAXフォーマット、現状ではこれからの順次対応待ちという形になりますが、先日リリースされたPro Tools 10.0.0には、既に3つのAAXプラグインが含まれております。
これまでPro Toolsのプラグインファイルは、OSXの場合、
起動ディスク>ライブラリ>Application Support>Digidesign>Plug-Ins
フォルダの中にインストールされる形になっておりましたが、Pro Tools 10からこれに加えて、
起動ディスク>ライブラリ>Application Support>Avid>Audio>Plug-Ins
という新しいディレクトリが加わりました。ここを覗いてみると、、、
“ChannelStrip”、”DownMixer”、”ModDelay_III” という3つのプラグインファイルが確認できます。
拡張子は “.aaxplugin”、そのままですね。
これら3つのプラグインはPro Tools 10から新たに加わったプラグインです。
Pro Toolsのプラグインメニューを「種類と製造元」の状態にして覗いてみると、新たな3つのプラグインは、 “Digidesign” でなく “Avid” の中から選択できるようになっております。将来的にDigidesign製のプラグインが全てAAX化されたら、恐らく全てAvidに属するようになるのではないでしょうか。
ここでPro Tools HDXを使用したら、上の3つのプラグインはAAX DSPでも動作するのではないかと予想されますが、AAX DSPとAAX Nativeは、TDMとRTASと何が違うのか、今ひとつ分かりません。
ここでロックオンプロさんのPro Tools 10特集のページの中に大変興味深いインタビュー記事を見つけました。
AAXは、今までRTAS/TDMと別のフォーマットであったものを1つに統合、環境に応じてNative/DSP(HDX)に自動割り当て、今までのセッションもAAXで自動的に開くことが可能。
メーカーにとってもRTASとTDMという2つのプログラムを開発するのではなくAAXという1つのものを開発すればよいので開発効率も上がり、今まであったようなRTASとTDMの音質差という問題も完全に同一のプログラムを処理エンジンに合わせて自動でコンパイルするため解決。
とあるのです。つまりAAX DSPとAAX Nativeは1つのプログラムで提供されるということになります。
ということは、AAXベースになればどのプラグインでもDSP上での使用が可能になるのか?、DSP/Nativeは同一商品になるのか? など興味は尽きませんが、これらはHDXが発売されれば次第に明らかになっていくことでしょう。
AAXプラグインの対応状況やその動作については、また情報が集まり次第レポートしたいと思います。
それでは次回の「Pro Tools 10 についてのあれこれ」をお楽しみに!
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