先週末に行われたAES 2011 NYにおいてAVID Pro Tools 10が発表され、すぐさまアップデータのダウンロード販売が始まりました。
WEB上では「待望のPro Tools 10」という謳い文句が踊っておりましたが、Pro Tools 9のリリースからわずか1年しか経っておりませんので、個人的には「もう??」といった感じです。また今回は、Pro Tools HD Accelの後継となるPro Tools HDXの発表も伴っておりましたので、正に「寝耳に水」でありました。
ここ最近、AVIDのような大手メーカーから新製品が発表される場合、WEB上でも世界同時発表になる機会が多くなっており、今回のPro Tools 10もAVID社WEB上ですぐさま日本語の情報ページがアップされました。
一通りの情報はこのAVIDのページで確認できますので、Pro Tools 10についての様々な情報ついてはこちらをご参照ください。
また今回のようにダウンロードによるアップデータの販売も同時に始まる際は、ユーザの方の情報の方が早い場合も多々あり、昨年のPro Tools 9の発表ぐらいから、私はTwitterを通して様々な情報をリアルタイムにやり取りをする機会が増えております。
今回のPro Tools 10の発表からそのファーストインプレッションまでの私の簡単なレポートは、私のTwitterアカウント(@UKSound)で行わさせていただきました。それらのツイートをトゥギャってみましたので、よろしければこちらもご参照ください。
そしてこれから何回かに分けて、Pro Tools 10について私なりに気になったところをいくつか検証してまいります。
・新しいディスク・キャッシュ機能について
AVID社WEBに掲載された「Pro Tools 10の新機能」を見てみると、Native版では「強化されたディスク・キャッシュにより、遅いハードドライブでも卓越したレスポンス」であるのに対し、HDだと「セッション全体をRAMに読み込む拡張ディスク・キャッシュにより、レスポンスに優れたレコーディングおよびプレイバックを実現」するとなっております。この新しいディスク・キャッシュ機能を検証してみます。
Pro Tools 10のプレイバックエンジンの設定画面を見てみます。左がHD、右がNativeです。
サウンドウーノのMac Proは計16GB分のRAMを搭載しているのですが、このマシンだと12GBまでのキャッシュサイズを設定可能です。画面を比べる限りではHDとNativeの違いがよく分かりませんが、何はともあれPro Tools HD 10にて、キャッシュサイズを変更した上でセッションを読み込んでみました。
左がキャッシュサイズを標準に設定、右がキャッシュサイズを10GBに設定して、とあるセッションを読み込んだ際のシステム使用状況の画面です。
もともとPro Toolsはハードディスクへの負荷が低いディスクパフォーマンスに優れたDAWです。この曲は左の画面のディスクのメーターが22%ぐらいが最大のハードディスク負荷でした。
キャッシュサイズを10GBに設定して同じセッションを読み込むと、右の画面のタイムラインキャッシュのメーターがぐんぐんと上がっていき、最後は100%までに達しました。恐らくこれでトラック全てをRAM上に展開している状態だと思われます。左の画面とほぼ同じ再生個所でメーターをキャプチャしましたが、右の画面だとディスクのメーターが1%しか振れていないのが確認できます。
ここでアクティビティモニタも確認してみました。左がキャッシュサイズを標準に設定、右がキャッシュサイズを10GBに設定してセッションを読み込んだ際のアクティビティモニタの画面です。
ここで注目は「KMM_Server」というプロセスです。左では実メモリを138.4MBしか消費していないのに対し、右では設定したキャッシュサイズと同容量の10.01GBを消費しております。どうもこの「KMM_Server」が新しいディスク・キャッシュ機能を担っているようです。
特筆すべきはキャッシュサイズを10GBに設定した際のPro Toolsの動作です。再生のレスポンスがとにかく素晴らしいのです。早送りや巻き戻しなども全くストレスなく使えます。上で読み込んでいるセッションぐらいのトラック数でしたら全てのトラックをRAM上で展開できるでしょうから、言ってみれば昔から存在するRAMディスクとして使用できると言ってもいいのかもしれません。
ただアクティビティモニタを見る限りでは、読み込むセッションの大小に関わらず、キャッシュサイズを10GBに設定すると「KMM_Server」は強制的に10GB分のメモリを掴んでしまうようです。右のアクティビティモニタではシステム全体のメモリの空き容量があと319.8MBしかありませんので、もう少し小さいキャッシュサイズに設定した方がよいかもしれません。
現状Pro Toolsはまだ32bitのアプリケーションですが、新しいディスク・キャッシュ機能を担う「KMM_Server」は64bitのプロセスであることが上のアクティビティモニタから分かります。つまり搭載するRAMの容量が大きいほど、使用できるディスクキャッシュも大きくなっていくと思われます。
キャッシュサイズを大きく設定したセッションで録音/編集作業をしてる際に、もしもマシンがクラッシュしたら??など、検証が必要な不安要素が存在することは確かですが、トラック数が100を超えるような規模の大きなセッションが日常的になり、ハイビット・ハイサンプルレートのセッションもますます増えていくであろう現状を考えると、素晴らしいソリューションとなりうる新機能であることは間違いないと思います。
簡単ではございますが、今回は新しいディスク・キャッシュ機能を検証してみました。
それでは次回の「Pro Tools 10 についてのあれこれ」をお楽しみに!
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